| 19世紀後半ウィリアム・モリス(1834〜96)を中心にイギリスでおこなわれたデザイン運動。美術工芸運動と訳されている。1861年、モリスはラファエロ前派の画家や建築家とともにモリス・マーシャル・フォークナー商会を設立して、ガラス絵・織物・壁紙室内装飾品などの工芸品の制作にあたった。これは、当時機械によって大量生産された製品が俗悪きわまるものであったため、その生産方式および商業主義に対してみずからの実践によって反抗したものである。モリスは手仕事による労働の喜びと、そこから生まれる事実の美を説いた。彼の美学の根拠はラスキンの思想にある。65年にモリス1人の経営にかわったが、しだいに事業は拡張し、90年にはハマースミスによりケルムスコット印刷所が設立されて、ケルムスコット版チョーサーとして有名な「カンタベリー物語」が最後に印刷された。モリスの考えのなかには終始機械によってつくられるものは悪であるという思想が顕著であり、中世の手工芸のありかたを理想にかかげたため、近代的な意味での工芸様式やデザインを創造し得なかったことは否定できない。しかし、真の芸術は大衆のものであるべきだという姿勢において、また過去の様式にとらわれずに想像力ゆたかにつくりだされたデザインの新鮮さによって、この運動は近代デザイン運動の発端となり、ヨーロッパ各地に大きな影響を残した。 |
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