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![]() 左 朝顔盃 右 小盃 江戸 ■ガラスがやってきた 「ありゃあ何だ」と人々はぴっくり仰天した。ひょんなことからポルトガル人が種子島にやってきて、「これでいっぱい人が殺せますよ」と言いながら、後生大事に鉄砲を伝えてくれた頃のことである。 目本に上陸したひとりの異人には目が4つ付いていたのである。その異人、2つの目は普通の人間と同じように当たり前の位置にあったけれど、後の2つの目は水面のようにきらきらと光って夫きいのである。 その姿はそれだけでも十分恐ろしいのに、おまけにその目は取り外しもできるらしく、妙ちくりんなツギ八ギだらけの着物の裂け目に仕舞い込むことだってできるのである。人々は遠くからも見物にやってきた。神かバケモノか、好奇と恐.1布が入り交じり、上へ下への大騒ぎである。 これが一般の日本人がガラスというものを目の当たりにした最初の出来事だった。もちろん、後の2つの目はメガネで、何人かの大名は貢ぎ物にメガネをもらい、視界がぱっと明るくなって御満悦だったという。 ![]() 菊文様 蓋付茶碗 江戸 ![]() 切子 角皿 江戸 |
■ガラスその宇宙的な物体 現代社会で「ガラスとは?」といきなり間かれたって、何の蹟路もなく「これです」と指さすのは簡単なことである。 ちょっと見渡すとガラスはどこにだってある。けれど、「では、そのガラスの正体は」というと、これがかなりややこしいのである。あの固いガラス、実は固体ではない。 まさかと思うけれど、ガラスには固体特有の結晶という構造がないのである。結晶とは、原子が規則正しく並んで化学式で表すことができる状態のことをいう。 ガラスの原子の並ぴ方はきわめて不規則なのである。それに、融点、つまり熱を加えて溶け始める一定の温度すら決まっていないのである。 ![]() 緑色向付 江戸 ちょっと面倒な話だが、一般的に固体に熱を加えて融解し、それをある一定の温度まで冷やすと固まって結晶になる。けれど、ある種のものは結晶にならないで次第に粘着性を増した固形物にしかならい。 これをガラス状態といい、無機物でこの状態になったものをガラスと呼ぶのである。難しい。少々ミクロの世界に入り込んでみることにする。するとガラスの中には網戸みたいな網目が張り巡らされている。 この網戸を例えば普通の窓にある網戸だと思って頂いて、これを何年も洗わなかったとしよう。すると網戸にはゴミやホコリや小虫がいっぼいからまりついてへばりつき、ひどい時には網目が詰まって風を通さなくなってしまう。 この網戸とゴミ、ホコリ、小虫をガラスをつくっている成分と置き換えると、つまりそれがガラスである。 | ![]() 菊形向付 江戸〜明治初期 では、網戸やゴミやホコリや小虫の代わりに、ガラスは何が固まっているのか。 無機物である。無機物とは何か?有機物ではないものである。 硫黄なんかの元素、ケイ素やホウ素、ゲルマニウムなんかの酸化物や硫化物、セレン化物、ああ、何が何だか…。 要はガラスになる素材は石とか砂とか金属とか、自然の中にいっぱいあって、それがそれそれのガラスにそれぞれの分量でそれぞれに入っていて、ミックスされて溶けて固まり、あるものはさっきの網戸の網目になり、あるものは網戸にからまりつく粒子になって、そしてそれが決して結晶にならないでくっついたままの形を保っているのである。 そしてそれは極端にいうと、限りなく固体に近い液体の固まりなのである。 ![]() 切子 ワイングラス 中央は口の所を金直ししてある 江戸後期〜明治初期 ![]() 左 菊形中鉢 右 盃 江戸後期〜明治初期 | ![]() |
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